公開日:2025年9月9日

ISOリスクマネジメント入門!基本プロセスから実践事例まで完全解説

ISO文書テンプレートを一式搭載!リスクマネジメント体制構築をサポート

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盾でリスクから守る

この記事は 14 分で読了することができます。

「会社にどんなリスクがあるのか把握できていない…」
「リスクを洗い出すプロセスを体系的に学んで、自社で実践できるようになりたい!」
「ISOでリスクマネジメントが求められているけれど、具体的に何をすればいい?」

 

このような悩みをお持ちの経営層やISO担当者の方は、ぜひご一読ください!

 

現代のビジネス環境では、情報漏えい、自然災害、サプライチェーンの断絶など、様々なリスクが企業活動を脅かしています。

これらのリスクから組織を守り、継続的な成長を実現するために、体系的なリスクマネジメントが不可欠です!

この記事で解決できる課題

1. リスクマネジメントってなに?

1-1. リスクマネジメントの定義

リスクマネジメント(Risk Management)とは、組織の目標達成に影響を与える可能性のあるリスクを体系的に特定し、分析・評価して、適切な対策を実施する経営管理手法です。

 

単純にいえば、「何か悪いことが起きるかもしれない」という不確実性を事前に把握し、その影響を最小限に抑えるための仕組みづくりです。

リスクマネジメントの傘
リスクマネジメント(傘)でリスク(雨粒)を最小限に抑える

1-2. なぜ今、リスクマネジメントが重要なのか

現代のビジネス環境は、以下のような要因により従来以上にリスクが高まっています。

上記のような要因に対し、効果的にリスクマネジメントを実施することで、組織はリスクを回避するだけでなく、今後発展していくための機会に取り組むことができます。

1-3. リスクマネジメントのメリットは?

それでは、考えうるリスクの要因に対し、リスクマネジメントを実施することで、企業や組織にもたらされるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?

組織運営面でのメリット

競争優位性の獲得

リスクマネジメントは組織を守る「傘」であり、同時にリスクを機会に変えて持続的成長を実現する戦略的ツールでもあります。

効果的なリスクマネジメントを実践することで、組織は安定した経営基盤と競争優位性の両方を手に入れることができるのです。

2. リスクマネジメントのプロセス

リスクマネジメントは単発の活動ではなく、継続的なプロセスとして実施する必要があります。
一般的に、以下の5つのステップで構成されています。
それぞれのステップについて、詳しく解説していきます。

リスクマネジメントのプロセス
リスクマネジメントのプロセス(モバイル用)

2-1. STEP1:リスクの特定(Risk Identification)

リスクの特定は何をする?

組織の目標達成に影響を与える可能性のあるリスクを、多角的な視点で洗い出します。
📝

POINT!

  • 多角的な視点でリスクを洗い出すため、異なる部署や職階の関係者を巻き込む
  • 過去の経験だけでなく、将来起こりうる変化も想定する
  • 「こんなことは起こらないだろう」という思い込みを排除し、幅広く検討する
  • 定期的な見直しを行い、新たなリスクの出現を見逃さない

リスク特定時に検討すべき観点

リスクを特定する際は、多角的な観点からリスクを洗い出しましょう。

市場変化、競合他社の動向 など

システム障害、人材不足、サイバー攻撃 など

為替変動、資金調達 など

法規制違反 など

ブランドイメージの悪化 など

2-2. STEP2:リスクの分析(Risk Analysis)

リスクの分析は何をする?

特定したリスクの発生確率組織への影響度を定量的または定性的に分析します。

📝

POINT!

  • 主観的な判断だけでなく、可能な限りデータや過去の実績に基づいて分析する
  • 発生確率と影響度の両面から評価し、バランスの取れた分析を心がける
  • 不確実性の高いリスクについては、複数のシナリオを想定して分析する
  • 分析の根拠を明確にし、後から検証可能な状態にしておく

リスク分析の観点

そのリスクがどの程度の頻度で発生するか

リスクが発生した場合の組織への影響の大きさ

リスクの兆候をどの程度早期に察知できるか

評価レベル 発生確率 影響度 検知しやすさ
1
(低い)
稀に発生
5年に1回程度
30%未満の確率
軽微な影響
一時的な業務支障
年間売上の1%未満の損失
容易
兆候を早期に発見可能
予防策実施が容易
2
(中程度)
定期的に発生
2〜3年に1回程度
30〜69%の確率
中程度の影響
業務効率の低下
年間売上の1〜5%の損失
普通
兆候を把握できる
事前対応が可能
3
(高い)
高頻度で発生
年に1回以上
70%以上の確率
重大な影響
事業の一部停止
年間売上の5%以上の損失
困難
兆候の把握が困難
発生後の対応が中心
評価レベル 発生確率 影響度 検知しやすさ
1
(低い)
稀に発生
5年に1回程度
30%未満の確率
軽微な影響
一時的な業務支障
年間売上の1%未満の損失
容易
兆候を早期に発見可能
予防策実施が容易
2
(中程度)
定期的に発生
2〜3年に1回程度
30〜69%の確率
中程度の影響
業務効率の低下
年間売上の1〜5%の損失
普通
兆候を把握できる
事前対応が可能
3
(高い)
高頻度で発生
年に1回以上
70%以上の確率
重大な影響
事業の一部停止
年間売上の5%以上の損失
困難
兆候の把握が困難
発生後の対応が中心

情報セキュリティのリスク分析については、発生確率・影響度・脆弱性を観点にして分析することもできます。
下記の記事で、情報セキュリティリスクの特定から評価・対応までの手順をご紹介していますので、そちらもぜひご確認ください。

ISMSリスクアセスメントの基本概念から5つの実施手順まで、初心者でも分かるよう詳しく解説しています。ISO/IEC27001認証取得を効率的に進めたい方必見の完全ガイド!

2-3. STEP3:リスクの評価(Risk Evaluation)

リスクの評価は何をする?

分析結果をもとに、リスクの優先順位を決定し、対応の必要性を判断します。

📝

POINT!

  • 組織のリスク許容度を明確に定義する
  • 限られた経営資源を効率的に配分するため、優先順位付けを徹底する
  • 評価基準を事前に設定し、一貫性のある評価を実施する(下記に例を掲載しています)
  • 経営陣の判断も含めた総合的な評価を行う

リスク許容基準を設定する

発生確率と影響度を掛け合わせたリスクスコアにより、以下の基準でリスクを分類します。

発生確率 × 影響度 影響度:1
(低い)
影響度:2
(中程度)
影響度:3
(高い)
発生確率:1
(低い)
1点
許容可能
2点
許容可能
3点
要注意
発生確率:2
(中程度)
2点
許容可能
4点
要注意
6点
危険
発生確率:3
(高い)
3点
要注意
6点
危険
9点
危険
発生確率 × 影響度 影響度:1
(低い)
影響度:2
(中程度)
影響度:3
(高い)
発生確率:1
(低い)
1点
許容可能
2点
許容可能
3点
要注意
発生確率:2
(中程度)
2点
許容可能
4点
要注意
6点
危険
発生確率:3
(高い)
3点
要注意
6点
危険
9点
危険

リスク分類別の対応方針

現在の管理体制で十分。定期的な監視を継続し、状況変化に注意する。

監視を強化し、軽減策の検討・実施を行う。優先度は中程度で計画的に対応する。

最優先で対策を実施する。経営陣への報告と緊急対応計画の策定が必要。

特定したリスクを客観的に評価し、適切な対応優先順位を決定しましょう!

2-4. STEP4:リスク対応(Risk Treatment)

リスク対応は何をする?

評価結果に基づいて、適切なリスク対応策を選択・実施します。

📝

POINT!

  • 対策の費用対効果を十分に検討し、経済合理性を確保する
  • 一つの対策で複数のリスクに対処できる統合的なアプローチを検討する
  • 対策実施後の残留リスクについても評価し、許容可能なレベルであることを確認する
  • 対策の実効性を確保するため、責任者と実施スケジュールを明確にする

リスク対応の4つの基本戦略

リスク対応は基本的に以下の4つの方法で実施できます。
具体的にどのような対応をとるべきかは、組織のリスクレベルや経営資源に合わせて適切なものを決定しましょう!

リスクの原因となる活動を中止または変更する
例:危険性の高い事業からの撤退、リスクの高い取引先との契約見直し

リスクの発生確率や影響度を下げる対策を実施する
例:セキュリティ対策の強化、従業員への安全訓練の実施、品質管理体制の強化

リスクを第三者に転嫁する
例:保険の加入、業務のアウトソーシング、契約条項による責任の分散

対策費用と効果を比較し、リスクをそのまま受け入れる
例:軽微で発生頻度の低いリスク、対策コストが損失予想額を上回る場合

2-5. STEP5:監視・レビュー(Monitoring & Review)

リスクの監視・レビューは何をする?

実施した対策の効果を監視し、定期的にリスクマネジメントプロセス全体を見直します。

📝

POINT!

  • リスク環境の変化を継続的に監視する
  • 対策の実施状況と効果を定期的に評価する
  • 新たなリスクの出現がないかを確認する
  • プロセス自体の改善点を見つけて更新する
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3. ISOにおけるリスクマネジメントの取り組み方法

3-1. リスクマネジメントに関するISO規格

ISOでは、リスクマネジメントに関する包括的な規格としてISO 31000:2018が制定されています。

ISO 31000:2018の概要

ISO 31000は、あらゆる組織、業種、規模に適用可能なリスクマネジメントの原則、枠組み、プロセスを提供する国際規格です。

認証を目的とした規格ではなく、考え方や進め方を示すガイダンス規格として位置づけられています。

ISO 31000を活用すべき場面とは?

以下のような場面・状況の際に、ISO31000を活用するのがオススメです!

リスクマネジメント成熟度に関わらず、体系的で効果的なリスク管理を実現するための重要な指針となります。

何から始めればよいか分からない組織の道しるべとして

現在の取り組みを国際標準と比較・改善するため

各規格のリスクマネジメント要求事項を統一的に整理するため

国際標準に基づいた管理体制であることを証明するため

3-2. 主要なISO規格におけるリスクマネジメントの考え方

ISO 9001(品質)、ISO 14001(環境)、ISO/IEC 27001(情報セキュリティ)などの主要なISOマネジメントシステム規格では、どのようにリスクマネジメントが要求されているのでしょうか?

ISO 9001:2015(品質マネジメントシステム)でのリスクマネジメント

リスクベース思考の導入

ISO 9001:2015では、「リスクベース思考(Risk-based thinking)」が新たに導入され、組織が品質マネジメントシステムを計画・実施・維持・改善する際に、リスクと機会を考慮することが要求されています。

リスクマネジメントに関わる具体的な要求事項
4.1 組織及びその状況の理解
Column

「リスク」と「機会」は何が違う?


ISOにおける「リスク」と「機会」について、具体例を交えて分かりやすく解説します。

目標達成に悪影響を与える可能性のある不確実な事象

  • 顧客のニーズ変化により、製品が売れなくなるリスク
  • 主要サプライヤーの倒産により、原材料調達が困難になるリスク
  • 熟練技術者の退職により、品質が低下するリスク

目標達成に好影響を与える可能性のある不確実な事象

  • 新技術の導入により、生産効率が向上する機会
  • 競合他社の撤退により、市場シェアが拡大する機会
  • 従業員のスキルアップにより、新サービスが提供できる機会
ISO 9001:2015(品質マネジメントシステム)のリスク・機会の例

ISO 14001:2015(環境マネジメントシステム)でのリスクマネジメント

環境リスクの体系的管理

ISO 14001:2015では、組織の活動が環境に与える影響を最小化するため、環境側面に関連するリスクと機会を特定し、対応することが求められています。

リスクマネジメントに関わる具体的な要求事項
6.1.1 一般(リスク及び機会への取組み)
ISO14001 基本事項 よくある質問解決ブック 表紙

ISO14001 要求事項の考え方に関する資料を無料配布中!

ISO14001の要求事項の考え方に関して、多くの組織様からいただいているご質問と解説をご紹介しています。

ISO 14001:2015(環境マネジメントシステム)のリスク・機会の例

ISO/IEC 27001:2022(情報セキュリティマネジメントシステム)でのリスクマネジメント

情報セキュリティリスクの包括的管理

ISO/IEC 27001では、情報資産に対するリスクを体系的に管理し、組織にとって適切なセキュリティレベルを確保することが要求されています。

リスクマネジメントに関わる具体的な要求事項
6.1.2 情報セキュリティリスクアセスメント

情報セキュリティ対策の向上や報セキュリティ対策の向上やISO/IEC27001(ISMS)取得を検討している方に向けて、ISMSリスクアセスメントの基本的な手順や進め方が分かる記事です。

ISO/IEC 27001:2022(情報セキュリティマネジメントシステム)のリスク・機会の例

3-3. ISOマネジメントシステムでリスクマネジメントを効果的に実践するポイント

1. 統合的なアプローチの採用

複数のISO規格を取得している場合、リスクマネジメントプロセスを統合して効率化を図りましょう。品質・環境・情報セキュリティのリスクを横断的に管理することで、組織全体の最適化が実現できます。

2. リスク台帳の活用

特定したリスクを一元管理するための「リスク台帳」を作成し、定期的に更新しましょう。これにより、リスクの見落としを防ぎ、対策の進捗状況を可視化できます。

3. 定期的な見直しとアップデート

ビジネス環境は常に変化するため、リスクアセスメントは定期的に見直す必要があります。年1回の定期見直しに加えて、大きな変化(新規事業開始、システム更新など)があった際にも実施しましょう。

4. 従業員教育の実施

リスクマネジメントは組織全体で取り組む活動です。管理者だけでなく、一般従業員にもリスクマネジメントの重要性と基本的な考え方を教育し、組織全体でリスク感度を高めることが重要です。

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4. まとめ

リスクマネジメントは一朝一夕で完成するものではありません。組織の文化として根付かせるには、継続的な取り組みが必要です。
まずは小さなステップから始めて、徐々に範囲を広げていくことをおすすめします。

 

適切なリスクマネジメントを実践することで、組織の持続的成長と競争優位性の確保を実現しましょう!

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    2023年東京スタンダード設立。エイエスアール株式会社、アームスタンダード株式会社、アフノールジャパン株式会社、QAICジャパン株式会社をグループ会社として持ち、ISO認証登録件数グループ合計5,500件以上の実績を持つ。長年の経験とノウハウを活かして、ISOをより活かすことができるお役立ち情報を発信。

    記事の監修者

    東京スタンダード編集部

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