公開日:2026年5月18日
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この記事でわかること
「ISO9001を取得したものの、毎年決まった時期に慌てて目標を立て、審査が終われば誰も見向きもしない……」
そんな品質目標の形骸化に悩む担当者や経営者は少なくありません。
本来、品質目標は、組織を成長させるための強力な武器です。
この記事では、単なる「審査対策」に留まらず、経営に直結する実効性のある品質目標の考え方と作り方、運用方法を解説します。
また、ISO9001の要求事項を正しく理解するための基礎知識や、明日から使える業種別・部門別の具体例も網羅しているため、ISOをこれから取得する組織様にも参考にしていただけます。
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ISO9001を運用する多くの企業にとって、品質目標の策定は毎年の定例業務となっています。
意気込んで立てたはずの目標が、現場で無視され、形骸化してしまっている場合、その理由は複数考えられます。
なぜ品質目標は形骸化してしまうのか?
日常的な経営管理や部門運営で用いられるKPIと、ISO9001のために策定された品質目標が、相互に整合性を欠いたまま、独立して存在している。
品質目標の達成が、具体的な便益に結びつくような設計がなされていない。
目標や、目標達成による便益について共有する手段が、「一方通行の通達」で終わり、コミュニケーションになっていないため、自分事のように認識されていない。
最終的な結果だけ確認し、目標達成までのプロセスやマイルストーンの達成状況などを振り返ったり、定期的に確認していない。
目標を実行するための人、モノ、予算、時間が確保されていない。
では、本来ISO 9001において、品質目標とはどのような存在であるべきなのでしょうか。規格が真に求めている定義や役割を紐解きながら、その核心に迫っていきます。
ISO9001における品質目標とは、「品質方針(会社が目指す姿、進むべき方向性)を実現するために、具体的に何を成し遂げるかを定めたもの」です。
ISO9001は、顧客の要求事項を正確に把握し、それに応えられる製品・サービス提供し、その品質を継続的に改善できるような「組織の仕組みづくり」をすることで、顧客満足度の維持向上を目指す国際規格です。
「品質」とは、製品の物理的な性能や仕様といった品質特性に留まりません。顧客対応などのサービス品質、事業プロセスにおける生産性、事業活動による周辺環境への影響など、さまざまな側面に及びます。
また、品質目標の果たす主な役割は、以下の通りです。
品質向上の
方向性を示す
進捗管理のための
ベンチマーク
現場における品質意識の統一と動機付け
これらの役割に共通するのは、「組織の抽象的なビジョン」と「現場の日常業務」をつなぐ翻訳機としての機能です。
例えば、経営層が掲げる「顧客第一」というスローガンだけでは、何をすれば顧客は満足するのか?という定義や基準があいまいで、現場は具体的に何を改善すべきか判断できません。
品質目標が「納期の遵守率100%」といった具体的な形になることで、初めて組織の全メンバーが同じゴールを目指して動けるようになり、関係者の行動も標準化されます。
品質目標がないと・・・
品質目標があると・・・
→ 日常業務の中で「どこを改善すべきか」が理解しやすくするための機能
品質目標は、以下のような組織の成長につなげることを目的として設定します。
顧客満足度の
向上
業務効率や
生産性の向上
売上UP
コストの削減
従業員のモチベーション向上
何のために品質目標を立てるのか、これらの目的を意識しましょう。
品質方針とは、トップマネジメントによって表明された、「品質に関する組織の方向性」です。その上流には、一般的に経営理念がありますが、これは「組織全体で目指すべき最終的なゴール」を指しています。つまり、品質方針は、環境方針や情報セキュリティ方針などと同様に、経営理念を支える1つの要素となります。
よって、品質方針は「目的や、戦略的な方向性」であり、品質目標は「方針を実現するための、具体的な行動指標に落とし込んだもの」であると言えます。
最終的に、品質目標が、下流にある実施計画・アクションプランへ展開される、ピラミッド型のマネジメントシステムが形成されるのが望ましいです。
目指すべき姿やあるべき姿からではなく、「今の事業計画や現場の状況がこうだから」という理由で品質目標を決定するのはよくありません。
また、品質目標を実施計画・アクションプランへ反映し終わったらそれで終わり、ということはありません。
計画を実行した後には、「実行した結果どうだったか」を評価する必要がありますが、品質目標の達成状況によっては、品質目標の見直しが必要になります。
ISO9001箇条6.2で要求されていることを、実務上で確認するポイントとともに、4つに分けて整理しました。改めて復習しましょう。
ISO9001において、品質目標は、以下の要素を満たしている必要があります。
品質方針との整合性
測定可能性
要求事項の考慮
適合性・顧客満足度
| 要求事項 | 実務上で確認するポイント |
|---|---|
| 6.2.1 a) 品質方針と整合している。 | 会社の品質マネジメントシステムにおける理念・ビジョン・戦略とズレていないか。矛盾していないか。 品質目標の達成が、品質方針の実現へとつながっているか。 |
| 6.2.1 b) 測定可能である。 | 品質目標の達成状況の確認(進捗管理)において、客観的に判断できるようになっているか。 定量的な数値目標や、定性的であっても判定基準などがあるか。 |
| 6.2.1 c) 適用される要求事項を考慮に入れる。 | ISO9001の要求事項だけではなく、顧客要求事項や関連する法規制、業界標準などのルールを守ることができているか。 それらと目標がどう関連しているか説明できるか。 |
| 6.2.1 d) 製品及びサービスの適合、並びに顧客満足度の向上に関連している。 | 製品やサービスが要求される品質レベルを満たしているか。 顧客満足度の向上につながっている、実現することを目的とした目標になっているか。 |
品質目標は、1度立てっぱなしにして終わりにするのではなく、次のように適切に管理するように求められています。
モニタリング
コミュニケーション・周知
変更、転換、修正など見直し
| 要求事項 | 実務上で確認するポイント |
|---|---|
| 6.2.1 e) 監視する。 | 目標の達成状況や、実施計画の進捗確認について、完了時期が近づいてからではなく、 軌道修正ができる頻度で 、定期的にモニタリングを行っているか。 |
| 6.2.1 f) 伝達する。 | その目標が「なぜ必要なのか」を現場が理解しているか。 具体的に、朝礼・掲示板・定例会議・ITシステムを使った共有など、周知の仕組みを作れているか。 |
| 6.2.1 g) 必要に応じて、更新する。 | 品質目標は、品質方針と違い、達成度合いや進捗に応じて適宜内容を見直し、更新する必要があるが、行っているか。 どういったタイミングで見直しを行うか、計画できるものはあらかじめ計画できているか。 |
品質目標は、目標管理シートのような文書化した情報をまとめておくことを求めています。達成に向けたスケジュールや、実施事項など、2-1の情報を反映した文書を、きちんと残しておく必要があります。
| 要求事項 | 実務上で確認するポイント |
|---|---|
| 6.2.1 組織は、品質目標に関する文書化した情報を維持しなければならない。 | 常に最新情報を反映し、だれがいつ閲覧しても、古い情報を参照することがないようにしておけているか。 そういった維持の仕組みができているか。 例:品質目標一覧、品質目標達成計画書、進捗管理表などを使用した管理 |
文書化した情報とは、必ずしも紙の書類だけを指しているわけではなく、ExcelやPDFなどの電子ファイル、クラウドシステム、その他専用のITツールやアプリケーションなど、どんな媒体を使用していても問題ありません。ISOの文書化要求の趣旨は、適切に管理され、リアルタイムで更新され、いつでも関係者がアクセスできる状態を保つことにあり、手段(何を使うか)に関して指定されていないためです。
品質目標をどのようにして実現するか、達成するかについて決めるときは、以下のような要素まで詳細に決めておくことが求められています。
何をするか
資源 (人、モノ、予算など)
責任者
完了時期
結果の評価方法
| 要求事項 | 実務上で確認するポイント |
|---|---|
| 6.2.2 a) 実施事項 | 目標達成に向けて何をすべきか?という視点で、行動施策を掲げます。 「資材発注の方法や、在庫管理の見直しを行う」と決めたならば、具体的にどういった品質活動をすべきか計画します。 |
| 6.2.2 b) 必要な資源 | 人員や材料、用具、設備、予算など、計画を実行するために必要なリソースは足りているか。 足りていない場合、経営層と交渉し、承認を得ることができているか。 |
| 6.2.2 c) 責任者 | 計画を実行し、その結果に責任を持つ担当者や担当部門は存在するか。 部門だけではなく、経営層への報告を受け持つ責任者が存在するか。 |
| 6.2.2 d) 実施事項の完了時期 | どのタイミングで、いつまでに完了させるのか、スケジュールが決められているか。 できれば、「年度末まで」といった大まかな時期だけではなく、各ステップごとの期限(マイルストーン)が設定されているか。 |
| 6.2.2 e) 結果の評価方法 | 何をもって「計画が成功した」と見なすのか、方法や基準は決まっているのか。 それら数値や、完了した状態の定義は、明確で適切なものか。 |
ISO9001を取得する目的とは何でしょう。ここではISO初心者向けに、取得の目的やメリット・デメリット、「不要」と言われてしまう理由まで解説!ISO9001が自社に必要かどうか、判断してみませんか?
品質目標設定の流れをご紹介します。
4つの手法をご紹介しますので、現在の品質目標の設定手順がうまくいかない、合っていないと感じている場合は、アプローチ方法を変えてみましょう。
以下5ステップは、経営方針を確実に現場へ浸透させたい、経営戦略を現場で確実に実行したい組織向けの設定手順です。
今年度、組織を取り巻く内外の状況など、現状分析を行い、会社が最も優先すべき経営課題を特定します。
特定した経営課題を「品質(顧客満足や工程改善)」の言葉に置き換え、品質マネジメントシステムにおける方針を、トップマネジメント主導で見直します。
各部門の役割に合わせ、方針達成のための目標(予算)を割り振ります。
設定した目標が、原則から外れたものになっていないかチェックし、細かく精査し、修正します。
その目標を達成するために必要な、実施事項、人員や設備などリソース、責任の所在、時間やタイミング、分析や評価の方法などしっかり計画します。
1981年に、ジョージ・T・ドラン氏によって提唱され、目標を明確にし、達成に向けた具体的な行動計画を立てやすくするため、ビジネスの場で活用されています。下記の原則が守られているか確認しましょう。
◎ Specific(具体性)
…具体的で明確な目標か
◎ Measurable(測定可能性) …進捗や成果を、数値・指標・基準で客観的に測定できる目標か
◎ Achievable(達成可能性) …現実的に達成できる目標か
◎ Related(関連性) …上位に位置する目標や組織のビジョンと関連している目標か
◎ Time-bound(期限の妥当性) …行動の優先順位は明確か、計画的に進められる期限か
以下の5ステップは、現場の「やらされ感」の払拭、実務上で発生している問題を解決したい場合に有効な設定手順です。
過去1年間のミスやクレーム、ヒヤリハット、不良品の発生などを、すべて洗い出します。
パレート図を作成し、発生頻度の高い「上位20%の原因」を特定ます。「この入力ミスの80%は、上位20%のこの原因から生まれている」といった事実の共有・現状の見える化が可能になります。
パレート図の結果を「なぜなぜ分析」へ橋渡しすることで、なぜこれが起きるのか?を掘り下げることが可能です。<br>また、「どうすればこのミスやクレームが減るか」「どうすればこのヒヤリハットの原因をなくせるか」「どうすれば不適合品が減るか」などを現場メンバー自身が議論することで、現場の実態に合った目標を決めることができます。
具体的な手順書(マニュアル、規定)、その他の使用文書(計画書・台帳類)、帳票テンプレート(記録・報告書類)の改訂や、教育訓練や設備改善などの新たな実施事項を、計画に盛り込みます。
現場の目標が、結果的に、組織の方針にどう貢献するかを整理し、必要に応じて、双方を修正します。
パレート分析とは、各要素の数値を大きい順に並べた棒グラフと、その累積割合を示す折れ線グラフを組み合わせた「パレート図」を用いるデータ分析手法です。パレート分析の背景には、イタリアの経済学者であるヴィルフレド・パレートが提唱した「パレートの法則(80:20の法則)」があります。例えば、【売上の80%を、お客様全体の20%に依存している】【10種類のクレーム原因のうち上位3項目で、不良品全体の80%を占めている】といった割合に関する法則です。
◎ 不良品の原因分析
発生した不良品を原因別に分類し、パレート図を作成することで、最も品質に対する影響の大きい問題から優先的に対策を講じることができます。
◎ クレーム対応の優先順位付け
お客様からの問い合わせを内容別に分類し、パレート図を作成することで、最もクレームの原因になっている問題から優先的に対策を講じることができます。
なぜなぜ分析とは、問題の根本原因を特定するために「なぜ?」を繰り返し問いかける問題解決手法です。課題が見つかった時、最も避けるべきは「努力不足」という精神論で片付けることです。
◎ 業務の属人化の原因を分析
パレート図で「どの部署や職種に負荷が集中しているか」を特定したあと、その背後にある構造的な問題をあぶり出すために、次のような流れで特定していきます。
① なぜ特定の作業員に負荷が集中したのか? A:熟練度が必要だが数名しかスキルがないため
② なぜ多能工化が進まないのか? A:生産目標をこなすのが精いっぱい、教育訓練できていない
③ なぜ教育時間を確保できない生産計画になったのか? A:生産能力ではなく受注量を優先して納期を設定しているため
④ なぜ無理な納期設定になったのか? A:部門間の連携不足や、上層部への報告の仕組みがない
⑤ なぜ報告の仕組みがないのか? A:納期厳守だけが最優先される評価制度・組織文化のため
市場の変化が激しい業界や、大きな失敗やリスクを未然に防ぎたい組織向けの、リスクアセスメントを活用した設定手順です。
内部・外部環境の変化によるリスクを抽出します。「ベテランの退職予定・新卒の入社予定」「新しい基幹システムの導入」「法規制の改正」など、放置すれば品質低下を招くリスクや、逆に活用すれば飛躍できる機会をリストアップします。
発生頻度と影響度でスコアリングし、閾値を超えたものを、【優先的にリソースを投じて対策すべきリスク】として絞り込みます。それら候補の中で、組織にとっての「重大性」を基に、さらに絞り込み、選定します。
特定したリスクを回避、あるいは軽減するための状態を「目標」として転換します。例えば、「〇〇のトラブル発生率をゼロにする」など【防御的な】目標を立てます。また、例えば、「新技術、新工法の導入」が組織にとって良い影響に繋がりうる場合は、機会として「リードタイムを半分にする」「歩留まりの向上」」など【攻めの】目標を立てます。
リスクを処理するための具体的な手順を、「品質目標の達成計画」として統合します。リスク対応策が日常業務(プロセス)の中に組み込まれているかを確認します。
計画を実行した結果、リスクが十分に低減されたか、あるいは新たなリスクが発生していないかを検証します。定期的な進捗確認の際、「対策を打った結果、当初の懸念事項は解消されつつあるか?」を評価します。また、マネジメントレビューを行い、次期に繋げます。
個人のスキル向上を「品質の基盤」と捉え、属人化を解消し、組織の地力を底上げしたい場合に適した設定手順です。
「今の業務には何が必要か」を明確に定義するために、各業務に必要な経験・スキルを可視化します。工程のトラブルを自力で解決できる、図面を正確に読解できる、自動溶接機のメンテナンスができる、新基準に基づく外観検査ができる、資格を取得している…など、具体的な内容で作成します。
現在の人員の習熟度をスキルマップに当てはめ、可視化します。これにより、理想(特定した必要な力量)とのギャップが明らかになり、【現状分析】が可能となります。例えば、「Aさんは操作はできるが保守ができない」「Bさんは1人でこなせるが人に指導できない」「Cさんは新人だから基礎教育が必要」など、教育ニーズの種を抽出しましょう。
「教育が必要な対象や項目」を明らかにしたら、いつ、誰が、どうやって教えるかのスケジュール(計画)に落とし込みます。OJTや外部セミナーなどの具体的な手法であったり、講師や費用などの必要な資源についても決定しておき、正式に社内承認を得ましょう。さらに、教育訓練計画と一緒に、「重要工程の多能工化率を〇%向上させる」といった最終目的たる【結果目標】を設定であったり、「○月までに専門研修を完遂させる」「作業マニュアルをすべて動画化し現場へ導入する」といった施策の達成ラインにあたる【マイルストーン】も決定しておきましょう。
現場が忙しくて教育が後回しにならないよう、品質目標の一部として進捗を管理します。ステップ3で決定したマイルストーンの進捗率(合格率や出席率など)を、定期的に管理すると良いでしょう。
教育を行った結果、「当初予定していた力量が本当に身についたか、それによって仕事の質が変わったか」を検証します。研修後の感想を調査するのではなく、多能工化は実現できたか、それによって現場の生産性が上がったかなど、当初の目的(品質目標)の達成度を確認しましょう。
4つの手法をご紹介しました。現在の品質目標の設定手順がうまくいかない、合っていないと感じている場合は、アプローチ方法を変えてみましょう。
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設定した品質目標が、以下のパターンに該当していないか、チェックしてみてください。
「今期も品質目標を100%達成する」のような品質目標はNGです。品質目標は、顧客満足の向上や社内課題の解決といった品質方針を実現するための「具体的な行動指標」です。それらをクリアすることだけを重視すると、達成しやすい「低い壁」ばかりを設定するようになり、組織の改善能力が低下します。
✔check!
「目標を達成して、組織や顧客にどのようなプラスの変化をもたらしたいか」という一歩先の成果を定義しましょう。
OK例:主要3製品における工程内不良率を、前年度比で15%低減させる
「5S活動を毎月実施する」「新しい測定機器を導入する」「社内研修を3回開催する」のような、実施計画・アクションプランをそのまま目標にしてしまっているような品質目標はNGです。これらは「手段(Do)」であり、その結果得られる「成果(Objective)」が抜けています。研修を3回開催しても、社員のスキルが上がらなければ意味がありません。
✔check!
「研修を3回実施した結果、作業ミスが何%減るのか」といった、実施した先にある「状態の変化」を目標に据える必要があります。
OK例:5S活動の徹底により、工場内の異物混入によるクレームを年間0件に抑える
OK例:設計変更ミス防止研修を実施し、図面訂正による手戻り工数を前年比20%削減する
極端な例ですが、「(営業部が)製造原価の低減を目標にする」「市場価格の変動を抑える」といった、現場の努力や工夫ではどうにもならない、責任や権限の及ぶ範囲ではない、外部要因に左右されすぎる指標を用いた品質目標はNGです。現場の担当者が「自分たちの行動で数値を変えられる」という実感(コントロール感)を持てない目標は、すぐに無視されるようになります。達成しても「運が良かった」、未達成でも「景気が悪かった」で終わってしまい、PDCAが回りません。
✔check!
自分たちのプロセスを改善することで、確実に変化させられる指標(リードタイム、歩留まり、内製化率など)を選定しましょう。
OK例:受注時の仕様確定までのリードタイムを10日短縮し、設計変更回数を半減させる
NG例で共通していることは?
良くない目標で共通している特徴は、「現場の納得感」と「具体的成果」の欠如です。目標を見直す際は、現場のリーダーに「この数値が改善されたら、仕事は楽になりますか? 会社は良くなりますか?」と問いかけてみるのが、形骸化を防ぐ一番の近道です。
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ここでは、形骸化を防ぎ、組織を強くするための運用のコツを解説します!
ISO9001の本質は、目標に対する結果を分析し、次のアクションへ繋げる「PDCAサイクル」の継続にあります。
品質目標に関して、年間を通じて以下のサイクルを「仕組み」として回すことができているか、まずは振り返ってみましょう。
組織の課題に基づいた「測定可能」な目標を立て、必要なリソース(人・モノ・予算などの資源)を確保し、実行計画・アクションプランを策定する。
計画に基づき業務を遂行する。この際、現場が「今、目標に対してどの位置にいるか」をいつでも確認できるよう、モニタリングできる状態にする。
定期的(月次など)に進捗を測定する。単に数値を追うだけでなく、「なぜその数値になったか」という背景をセットで把握する。上手くいっている場合は、その状況を横展開する。
計画通りに進んでいない場合は、やり方や評価方法を変える、あるいは目標自体を見直すなどの、修正・是正処置を講じる。
品質目標を適切に管理し、PDCAサイクルを回すための工夫をご紹介します。
「結果」としての数値目標だけを追って評価するのではなく、その結果を生み出すための「プロセス(方策)」に対する目標も重視してください。(いわゆるマイルストーンと呼ばれるもの)
結果はプロセスの出口に過ぎません。プロセスが適切に管理されていれば、結果は自然と付いてきます。どちらか一方が重要なのではなく、「何に取り組むか(プロセス)」と「どうなったか(結果)」を両輪で管理することが不可欠です。
プロセスアプローチとは、業務を【一連のプロセス】として捉え、それぞれのプロセスのインプットとアウトプットを明確にし、プロセス間の相互の関係を把握し、計画通りに進んでいるか確認することを言います。
◎メリット
再現性が高まる:偶然うまくいったではなく、この手順だからうまくいったという仕組みができる
原因究明が早い:ミスが起きた時、プロセスのどこに欠陥があったか、遡って調べやすくなる
全体最適の実現:各部署が、自身の前の工程と後ろの工程のことを考えて動くようになる
「結果が悪かったのは、どのプロセスに不備があったからか?」という視点を持つことで、精神論ではない、具体的で再現性のある改善が可能になります。
目標管理を、より強固な組織の仕組みへと昇華させるためには、その他の仕組みと連動させることが重要です。
初めに設定した「やり方」や「評価方法」が、当初の目的と一致しているか、現場で定期的に確認します。現在やっていることは、本当に目標達成に繋がりそうか?見込みがありそうか?途中途中で立ち止まり、妥当性を確認しましょう。
内部監査での確認項目(チェックリスト)に、品質目標の進捗確認(達成度やデータの確認)を加えるようにしましょう。未達の際は、その要因を見つけやすくなります。また、現場にヒアリングを行い、KPI指標の測定方法や実績をチェックし、課題が見つかった際に是正を指示すれば、内部監査が「目標が形骸化していないか」を確かめるチェック機構として機能します。
最終的に、これまでの運用結果(進捗レポート)をトップマネジメント(経営層)に報告します。「目標が達成できませんでした」という報告で終わらせず、「達成のために次はこれだけの経営資源(予算や人員配置)が必要です」と、経営判断を仰ぐ場にすることが、形骸化を打破する最大の鍵となります。
是正処置、品質目標、仕入先管理…監査でチェックすべきポイントを場面別に紹介。 チェックリストでは見抜けない運用の実態を聞き出すのにで役立つ“対話型ヒアリング”のコツと事例を紹介。
ISOマネジメントレビューの概要と目的・主な議題・実施方法など、マネジメントレビューの基本を解説。ISO9001箇条9.3のインプット・アウトプット項目とその具体例、ISO審査で確認されるポイントまで網羅。
これまで、品質目標とはどういったものなのか解説してきました。ここでは、各業種・各部門でよく採用される品質目標の指標および具体例を紹介します。
KPI例
ポイント
「不良を出さない」「効率よく作る」「原価を下げる」というQCDの最適化が中心となります
KPI例
ポイント
「バグの抑制」「稼働の安定」「プロジェクトの進捗管理」が品質の柱となります
KPI例
ポイント
「現場の安全」「手戻りの防止」「工程遵守」が重要な指標となります
KPI例
ポイント
「衛生管理(食中毒防止)」「鮮度」「期限管理」を最優先事項として目標を決めます
KPI例
ポイント
「接客の質」「スキルの標準化」「リピート」などを重視して目標を設定します
品質目標の具体例
品質活動
作業標準の遵守によってアウトプットのバラツキを最小化します
品質目標の具体例
品質活動
サプライチェーン全体のリソース供給や進捗管理を最適化します
品質目標の具体例
品質活動
顧客要求を正確に捉えて最適な提案を行います
品質目標の具体例
品質活動
信頼回復とロイヤリティ向上を図ります
品質目標の具体例
品質活動
正確かつ効果的な情報発信を行います
品質目標の具体例
品質活動
ニーズを確実な仕様へ変換する
品質目標の具体例
品質活動
ユーザーが安心して利用できるシステムを構築・維持します
品質目標の具体例
品質活動
事業の成功確率(蓋然性)をコントロールします
品質目標の具体例
品質活動
中長期的なビジョンの達成とリスク統制を両立させる経営活動を推進します
品質目標の具体例
品質活動
組織の土台となるインフラを維持します
品質目標に関するISO9001審査時に気を付けることをまとめます。
A:目標未達そのものが、直ちに不適合になるとは限りません。
審査で確認されるのは、目標を達成できたかどうかだけではありません。
未達となった原因を分析し、必要な対策を検討・実施しているか、次回以降の改善につなげているかが重要です。
たとえば、目標値に届かなかった場合でも、以下のような記録が残っていれば、PDCAを回して改善に取り組んでいる状態として説明しやすくなります。
一方で、未達のまま放置していたり、原因分析や改善策の検討が行われていなかったりする場合は、審査で指摘を受ける可能性があります。
A:審査で聞かれることがあります。
品質目標は、「キリがよい数字だから」「達成しやすそうだから」といった理由だけで設定するものではありません。
品質方針、事業計画、過去の実績、顧客からの要求・フィードバック、クレームの発生状況、プロセス能力などを踏まえて、妥当な目標値を設定することが重要です。
審査では、次のような観点で確認されることがあります。
目標値を設定する際は、過去実績や現状の課題をもとに、説明できる根拠を残しておきましょう。
A:あいまいな表現を避け、達成状況を判断できる基準を明確にしましょう。
「品質意識を高める」「5Sを徹底する」「社員のスキルアップを図る」といった目標は、そのままでは達成できたかどうかを判断しにくくなります。
数値化が難しい目標であっても、次のように完了条件や判定基準を明確にすることで、運用しやすい品質目標になります。
重要なのは、数値の有無ではなく、目標の達成状況を確認できることです。
実施記録、評価結果、改善記録などを残し、審査時に説明できるようにしておきましょう。
A:指摘される可能性はあります。
目標の内容そのものが直ちに重大な不適合になるとは限りませんが、品質目標としての妥当性を確認されることはあります。
たとえば、次のような目標は注意が必要です。
審査では、なぜその目標を設定したのか、どのように達成状況を確認しているのか、達成・未達の結果をどのように改善につなげているのかが重視されます。
そのため、品質目標に関して「設定した理由」「顧客満足や業務改善との関係」「達成状況を確認する方法」を、実績データや記録に基づいて説明できるようにしておくことが重要です。
A:適切な理由と手順があれば、目標を変更すること自体は問題ありません。
市場環境の変化、組織体制の変更、顧客要求の変化、設備や人員体制の変更などにより、当初設定した目標が実態に合わなくなることがあります。
そのような場合は、目標を見直すことも品質マネジメントシステムの運用上、必要な対応です。
ただし、未達を避けるためだけに目標を下げるような変更は、妥当性を問われる可能性があります。
目標を変更する場合は、次のような記録を残しておきましょう。
目標は一度決めたら変えてはいけないものではありません。
大切なのは、実態に合わせて適切に見直し、その理由と経緯を説明できるようにしておくことです。
審査においてもっとも見られるのは、結果の評価方法です。下記に気を付けて審査に臨んでください。
NG例 主観的な報告
「前年よりも頑張りました」
「できていると思います」
「現場はわかりませんが、改善はしました」
このような報告では、目標の達成状況や改善活動の有効性を客観的に確認できません。
審査では、感覚的な説明ではなく、実績データや記録に基づいた説明が求められます。
OK例 記録に基づく報告
「目標は不良率〇〇%以下でした。実績は〇〇%となり、目標には届きませんでした」
「未達の主な原因は、〇〇工程での確認不足でした」
「対策として、作業手順書の見直しと作業者教育を実施しました」
「対策後は、同じ原因による不良件数が〇件から〇件に減少しました」
「次年度は、見直した手順の定着状況を確認し、達成率〇〇%以上を目指します」
このように、目標、実績、原因、対策、改善結果、次回の対応を記録に基づいて説明できると、品質目標がPDCAに沿って運用されていることを示しやすくなります。
品質目標は本来、組織のボトルネックを解消し、「成長を加速させるためのエンジン」です。
しかし、経営戦略と切り離されたノルマになってしまうと、現場の負担を増やすだけの「重荷」に変わってしまいます。
品質目標を「守らなければならない義務」と捉えるか、「組織を良くするためのナビゲーション」と捉えるかで、得られる成果は180度変わります。
完璧な目標を立てようと力まず、また、大きすぎる結果目標に縛られるのではなく、まずは現場が納得感を持って取り組めるプロセス目標の設定(改善)から始めてみてください。
それが、形式的なISOから「経営に貢献するISO」への第一歩となります。
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2023年東京スタンダード設立。エイエスアール株式会社、アームスタンダード株式会社、アフノールジャパン株式会社、QAICジャパン株式会社をグループ会社として持ち、ISO認証登録件数グループ合計5,500件以上の実績を持つ。長年の経験とノウハウを活かして、ISOをより活かすことができるお役立ち情報を発信。
記事の監修者
東京スタンダード編集部
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